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introduction・カービングに魅せられて

カービングに魅せられて
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カービングは歴史あるタイ王国の誇る伝統工芸であり、野菜やフルーツ、石鹸を、芸術的に彫り上げていくアートです。
カービングとの出会いは、1996年の夏、自宅新築時に知人の紹介でジムトンプソンのカーテンを作るためにバンコクのオリエンタルホテルの滞在中でした。 かつては宮廷料理を華やかに彩っていたであろうフルーツたちを、「サラリンナム」へのシャトルボートの船着場で見かけたとき、心が震えました。
実はそのときは、カービングという名前さえわからず、妊娠を機に、長い間、私の心の奥底に秘められたままになっていました。
その後、長女の就学を待って、何かまた始めてみようと思ったとき、再びあの時みた光景を呼び戻させてくれたのが、 今もお世話になっているカービングスタジオSの信乃先生です。

カービングは、ナイフ一本で彫り上げていくことのシンプルさもその魅力の一つですが、素材は身近にある野菜やフルーツですし、石鹸やキャンドルに彫り上げていけば、 その輝きを長くとどめておくことができるので、伝統工芸でありながら、ある意味で新しい時代にもあったエコクラフトと言えるのではないでしょうか。
先生には、習いたてのころ、「カービングはとにかく思い切りが大切です!」と教えていただいていました。繊細で女性的なイメージがありますが、いわゆる「ためらい傷!?」は 特にフルーツには厳禁です。下書きもほとんどなく、サクサクとリズムよく彫りすすめていかないと、大切な水分が出てきてしまいます。 さらにナイフは正直です。自分でナイフを入れた通りに、その結果が表れます。なかったことにしよう・・・という訳にもいきません。
そして何よりも、彫り手によって同じデザインでも、人に与える印象はさまざまです。単純なデザインで決して均等ではないのに、味のある作品に出会うと、感動します。

あれから7年。今またあらためて、カービングの世界の奥深さに魅せられています。

吉川雅子